月の煌めきを隠してしまうような、ネオンの洪水を撒き散らしている高層ビルの一室。

黒で統一された広い部屋の真ん中で、大きなキングサイズのベットに全裸の男が一人横たわっていた。

男がゆっくりと瞳を開くとその瞳は金色に輝き、その瞳孔は獣のように縦に開いていた。


けれど数回またたくと、たちまち黒とも茶色ともつかない瞳の色と、人が持つ丸い瞳孔へと戻っていた。


男は上体を起こしベットからゆったりと、優雅な獣のように床へと降り立ち、黒一色の部屋を後にした。








扉を開くと大きなガラス窓に、香港の夜景を一望できるリビングが現れ。


「天佑様、こちらを」


そう言って黒のガウンを手に現れたのは天佑の世話係の周 俊熙。

天佑はガウンを身に纏い、リビングのソファへと腰を沈めた。するとすぐに目の前のテーブルには、クリスタルグラスに注がれたミネラルウォーターがスッと差し出され。

それを一口飲み、テーブルへと戻し。


「俊熙、日本へ行く」

「数日の滞在でしょうか」

「いや、しばらくは拠点をあちらに移す」

「かしこまりました。すぐに準備いたしますが日本の、、、東京で宜しいでしょうか」

「ああ、東京だ。そして黎名義のバスポートを用意しておけ。東京の慶瑛工業大学へ行く」

「かしこまりました」






天佑は夜景が一望できるリビングのガラス窓まで行き、窓に指を這わせながら東京がある方角を眺め。


(貴女は日本にいたのですね。しかも男に生まれ変わっているなんて。ふふ、それで私から逃げたとお思いか。私には性別など関係ないというのに。私は貴女の魂をそのものを愛しているのだから。あぁ、もうすぐ貴女に会えると思うだけで私の体が、魂が歓喜に震える。しかし今度こそは慎重にことを進めなければ。前世のような二の舞だけは避けなくてはならない。あぁ、待っていて下さいね愛しい人。すぐに貴女の元へ参りますから)



天佑は一人 笑みを浮かべると夜景に背を向け、バスローブを脱ぎ捨てもう一度寝室へと戻った。




夢で愛しい人と会うために。