振り向き俺達の姿を確認したルキーノが目を見開いて舌打ちし、何事かを叫びながら聡に襲いかかろうとした。

俺はすぐさま聡の側まで行き、聡を左手で抱き込みながら腰に下げていた剣を抜き、切っ先をルキーノの額へピタリと据えた。


ルキーノは息を飲みながら動きを止めた。



カロージェはと言うとゴロツキ共を取り押さえ、それを影の者が紐で縛り上げている。

俺はルキーノの事も含めて後をカロージェ達に任せて、一先ず先に帰らせてもらうことにした。


「サトシ、怪我はないか」

「(コクコクコク)」

「どうした気分でも悪いのか」

「(フルフルフルフル)」


俺は聡にマントをかぶせてから太ももに腕を差し入れて抱き上げ、なるべく目立たない道を選び取りながらお爺様の屋敷に向けて走っていた。


聡は俺の首に腕を回し、肩口に顔を伏せたまま顔を上げてくれない。

表情が見えないのは少し心配だか、とにかく急ぎ走り抜けた。



俺は屋敷に着いてからも、皆への挨拶もそこそこに今現在の俺達の巣へ入っていった。


「サトシ、俺たちの部屋へ帰って来たぞ」


俺は聡をベッドの上に降ろそうとしたが、聡は俺の首に抱きついたまま離れてくれない。


「サトシ」


俺は優しく聡に呼びかけたが、首を横に振りながら拒否して来た。

俺から離れないことに嬉しさがこみ上げてくるが、それをぐっと押さえ込んで俺がベッドへと座り、そして膝の上に聡を座らせた。


相変わらず顔を上げてくれない聡の髪に頬を寄せながら、俺はそっと話しかけた。


「サトシ、聞いてくれないか。俺はこの髪と瞳の色で、人から言われのない非難の視線や言葉を言われたことがある。それは小さな俺を傷つけたが、家族はもっと傷ついていた。母上は特にだ。だからこそ家族は特別俺には甘かったが、俺はな、それにも秘かに傷ついてた。もし俺の色が普通だったなら、俺は兄上と同じように厳しく躾けられていたのではないかと、、、、。俺が普通ではないから甘やかされているのではないかとな、、、。だから俺は自分を律し、周りから何も言われないほどの者になろうと努力した。まぁその甲斐あってか、こんな色だが俺の実力を認めてくれる者も現れた。だからもう、これ以上は望めないと思っていた。仕事だけでも認めてもらえたのだからとな」


聡が伏せている肩口の辺りが少し湿り気を帯びて来た。

だが俺は気づかぬふりをしながら、聡の背中をゆっくりと摩る。


「しかしサトシと出会って欲が出た。何気ない日常の積み重ねが、あんなにかけがえの無いものだとは思わなかった。だからその日常を壊したくなくて身動きが取れなくなった。、、、もし俺が思いを伝え、拒否されたらと思うと怖かったんだ。だからあんな形ではあったがサトシが俺のことを好きだと言ってくれた時はすごく嬉しかった。なあサトシ、こんな臆病で卑怯な俺でも良いか。もしこんな俺でも良ければ付き合ってくれないか ? 俺もサトシが好きなんだ」

「、、、、ぼ、僕もジェルバジオが大好きです。僕でよければお願いします」


聡は俺の肩口から少し顔を上げて上目遣いに俺を見やりながら、小さな声でそう言ってくれた。

俺は嬉しくなって尻尾が揺れるのを抑えられずパタパタと動いてしまい。

その音が聞こえるのか、聡が楽しそうにクスクスと肩を揺らし笑った。


俺は聡の目尻に溜まっている涙に、そっと唇を寄せた。

それに対し聡が恥ずかしそうに、くすぐったいと恥ずかしいげに笑うので、俺もなんだかくすぐったい気持ちになりながら、目尻や瞼、額に頬へリップ音を響かせながらキスを落としていった。


そして口の端にキスを落とした時に「あっ」と声をあげた聡の、薄く開いた唇に吸い寄せられるように唇を寄せて食みながらベットに聡を寝かせ、その上から俺は覆いかぶさった。


「、、、ふぁ、、ぁぁん」

「、、ハアハア」


薄く開いている隙間に自分の舌を差し入れて、聡の口内の中を余すことなく舐め回し、逃げ惑う舌を捉えて自身の舌と絡ませ合いながら、聡の舌を俺の口の中に招き入れた。


その舌に軽く歯を立てて甘噛みしていたが、何だか聡の様子がおかしいことに気がつき、、。


俺は聡の舌を解放し、瞳を覗き込んで見たが。


「、、ぼ、、ぼ、っく、苦し、、てっ、、言って、、ゴホゴホ」

「、、、、すまん、悪かった」


肩で息をしながら顔を真っ赤にして、俺を精一杯睨んでいる聡。

そして俺に苦情を言い終わる前に咳き込んでしまい、俺は聡の背中を労わるように摩った。


その後もベットの上で如何に聡が苦しかったか、自分との体格差を考えてほしと切々と語ってきたが。


俺は先ほどの煽情的な姿に煽られしまい、どうすればもう一度キスすることが出来るのか、、、。

怒られている間中、その事で頭が一杯だったのは秘密だ。