〜序章〜


日本でも地球でもない世界。


その世界は魔法に溢れ、人族、魔族、獣人などたくさんの種族がそれぞれに国を興し暮らしていた。



そんな世界の人族の国、そのとある地方の村で一人の娘が初恋の青年と結婚式を挙げようとしていた。


娘は初恋の青年との恋を実らせ、今日という日を迎えた。

両家の両親、親友、近所の親しい人たちに囲まれ娘は幸せだった、とても幸せだったのだ。


青年からブレゼントされた布に、娘が自分で染めた糸で刺繍を施して衣装を仕上げ、頭に被るベールも編み今日の式に望んだ。


そして頭に被っているベールを青年が捲り、二人は微笑み照れながらも誓いの言葉を今まさに述べようとした、その時。



ーーーーーグゥゥァァァォォォォォ

ーーーーーゴオオオオオォォォォォ


突然、獣の咆哮と突風が会場を包んだ。



会場にある丹精込めて作られた料理や、綺麗に飾り付けられた花が無残にも辺り一面に飛び散った。


そして青年と娘の前にはいつの間に現れたのか、美麗な男が。

今まで見たこともない様な美麗の男は、娘に自分と共に来るように言った。


しかし娘も青年もそれを拒否した。

会場に居た人々も美麗な男を連れ出そうとした。


だがその時、悲劇は起こった。




娘と謎の美麗の男以外の人々が地面に倒れこんだのだ。

しかも皆、血だらけで。


娘は自分の側に倒れている男の側へしゃがみ込み、その肩へ手を伸ばし体を揺さぶったが。


ーーーーーーコトリ


青年の頭部が胴体から離れ、転がっていった。


「いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


叫び、気を失った娘を美麗な男が支えた。

だが次の瞬間、娘は真っ黒な龍の手に掴まれていて。


黒龍は娘を連れ、血にまみれた場所から飛び立って行った。









あれからどれ程の時が経ったのか、今の自分には分からない。

ただもうすぐ自分もアレの命も終わりを迎える。

長かった、この時をどれほど待ちわびていたか、、、。


次に生まれてくるときはアレの側だけは嫌、絶対に嫌。

そう、何処か遠くアレが追ってこれないような遠く離れた平和な地がいい。


そして今度は女ではなく、男に生まれて平凡な人生を過ごしたい。

私は今度こそアレと離れ、慎ましく暮らしたいの。


願うのは、ただそれだけなの。